創刊のことば


 <歴史学者J・E・アクトンの有名なことば「権力は腐敗する。絶対的 権力は絶対的に腐敗する」に象徴されますように、権力の腐敗がほとん ど法則的であることを前提として、近代の国家は腐敗を構造的に防ぐ手 段たる「三権分立」を創出しました。しかしこの三権はいずれも国家権 力に属するために、しばしば癒着あるいは独裁化に陥りやすい現象がみ られます。

 この「癒着あるいは独裁化」を監視して未然に防ぐための最も有効な 働きを示してきたのがジャーナリズムです。腐敗しつつある権力は、国 民に「知られる」ことをまず最もおそれます。知られなければ国民の怒 りも起きようがないはずなのですから。したがってジャーナリズムは、 国家権力としての「三権」からは全く独立した市民のものでなければな らず、そこに俗称「第四権力」たる意味も役割もあるわけです。民主主 義社会にとって健全なジャーナリズムが必須条件でもあるゆえんでしょ う。

 しかしながら、そのような第四権力としてのジャーナリズムも、国民 の間に信頼がなければ影響力はありません。一般的に週刊誌の信頼度が 過去に高くなかったのは、センセーショナリズムや羊頭狗肉・エログロ ・プライバシー暴露に走りすぎ、正確性や取材倫理・批判精神・報道対 象などの点で真のジャーナリズムからかけ離れていたからでしょう。

 ジャーナリズムが国民の信頼を失うもう一つの大きな原因に、国家権 力との癒着あるいは国家権力の広報機関化があります。三権を監視する 役割のはずが、三権の補完物と化しているのでは、第四権力としての存 在理由もなくなってしまいます。

 日本敗戦からまもなく五十年。日本列島はゴルフ場などで環境破壊が すすみ、去年は日本軍(自衛隊)の海外派兵が強行され、金権政治の腐 敗構造も極点に達していることが国民の前に明らかになりました。この 重大な時期に、日本のジャーナリズムははたして第四権力の名に恥じぬ 役割をつとめているのでしょうか。


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